東北の名旅館、山形県赤湯温泉の「櫻湯 山茱萸(さくらゆ さんしゅゆ)」さんを紹介させていただきます。
2015年3月11日現在、2012年に1回、2013年に2回、2014年に2回、計5回の宿泊経験があります。
これからも、回数は少なくなるかもしれませんが、きっと行くことになると思います。
いや、しばらくいけない期間が続くと行きたくてたまらなくなることでしょう。
「赤湯温泉 櫻湯 山茱萸」さんはそういう旅館です。

この一角だけ電柱がありません。とても開放感があります。右は愛車、2回目からは車の旅です。
この旅館は『日本百名宿(柏井 壽著)』にもとりあげられています。(日本百名宿-【電子書籍】もあります。)
「ニッポンを、知る旅は宿にあり!」年間、全国津々浦々の旅館やホテルに250泊する著者が選ぶ、温泉、絶景、美食の宿100軒。手軽に泊まれるビジネスユーズの贅沢ホテルから、お籠りリゾート、新スタイルの日本旅館、伝統息づく軽やかな老舗まで、泊まって良かった宿のみしか載せていません。地域ごとにおすすめ宿を紹介しているので、ふとどこかに行きたいと思い立った時に使える完全保存版。もう宿選びには困らない。
私は四国の愛媛県在住ですが、はるばる東北は山形県の旅館にまで出かけて行くにはそれなりのご縁と理由があります。
今日は、2015年3月11日、あの東北大震災から4年になります。
私と家内が東北支援活動に関わるようになったのは、震災の4日後の2011年3月15日でした。
そのきっかけとなったのが、山形県赤湯温泉の老舗旅館、櫻湯山茱萸さんでした。
そして、今現在も東北支援活動に関わっているのもこの老舗旅館との出会いが大きな要因になっていると思います。
この記事のコンテンツ
赤湯温泉 櫻湯 山茱萸(さんしゅゆ)さんとの御縁
2011年3月11日の東北大震災直後から決めていた東北旅行を予定よりも半年遅れて,2012年のゴールデンウィークを利用してようやく実行することが出来ました。
宿泊する旅館は,山形県の赤湯温泉にある「櫻湯 山茱萸~さくらゆ さんしゅゆ」と震災直後から決めていました。
というのも,「櫻湯 山茱萸」さんは,高級老舗旅館であるにも関わらず,通常営業を停止し旅館施設・スタッフをつかいボランティアで民間の避難所として福島からの避難者の支援活動を行うことを震災直後の3月15日に告知したのです。
そのことを,同日にたまたま知って以来、愛媛の地よりその活動を半年間にわたって見守らせていただいた経緯があったからです。
「さんしゅゆ避難所」は他の避難所とは異なり,体育館などの避難所では生活が極めて難しい「後期高齢者・乳児・移動障害の方がおられるご家族」を優先して受入れられ,その方たちの生命を守られました。
避難所入居人数は、延48人(12家族)、大浴場利用人数は延9,958人でした。
詳細は、ご主人が「総括」として、旅館のブログ「櫻湯 山茱萸 つれづれ日記」に書かれています。
この活動は、自ら借金をし倒産も覚悟で行ったものであり,その精神には本当に頭が下がります。
実際,避難所としての役目を終了した後は民事更正法の手続きに入るところまでいったそうですが,幸い再建に協力してくれる銀行があり,2012年10月20日にリニューアルオープンの運びとなりました。
櫻湯山茱萸さんの”おもてなし”
こういう方たちが経営されている旅館の“おもてなし”というものを味わいたくて,ゴールデンウィークの混雑時に一度も旅行をしたことがない私たちですが,四国の愛媛からはるばる東北を訪れてみようと考えた次第です。
それが2012年の春のことです。
そして,予想通り,いや予想以上に素晴らしい旅館でした。
実際に旅館を訪れ、そして滞在してみて,自信を持って皆さんにお薦めできる旅館だと確信できました。
おもてなしの心に溢れたこの旅館の存在を一人でも多くの方に知っていただきたく、本ブログにてご紹介させていただこうとこの記事を書いています。
ぜひ一度訪れてみて下さい。
そして,その素晴らしさを知人の方々にお伝え下さればこの記事を書いた甲斐があるというものです。
宿泊した部屋の紹介
「櫻湯 山茱萸」さんはオーベルジュ(食事を楽しみながら宿泊できる施設)です。
チェックインは午後2時からでチェックアウトは正午ですから,滞在者にその気持ちがあれば時間はとてもゆっくりと流れます。
◎詳細は公式ホームページをご覧下さい。
旅館の入り口では,旅館名でもある山茱萸(サンシュユ)が出迎えてくれます。
サンンシュユはミズキ科の落葉樹で,早春に萌黄に先立って枝先に鮮黄色の小さな花をたくさん集めて咲きます。
その様子に牧野富太郎博士が「春黄金花(ハルコガネバナ)」と命名したと言われています。
また,秋のグミのような赤い実を珊瑚に例えて,「アキサンゴ」とも呼ばれます。
旅館の部屋数は7室だけのこぢんまりとした静かな佇まいの宿です。
その分サービスは実にきめ細かく行き届いたものです。
これ見よがしのサービスではなく、控え目なサービスが好感が持てます。
スタッフも若い人が多いのですが,教育が行き届いているのが見てとれます。
同行した義父もこの点にはとても感心しておりました。
ご主人が骨董が趣味ということもあり,ここかしこに趣味の良い焼き物などが飾られています。
私も学生時代に趣味で焼き物をやっていたことがありますので、骨董の中でも焼き物を見るのはことのほか好きです。
各部屋には山野草の名前が付いています。
私たちが宿泊したのは「釣船草(つりふねそう)」です。
私の写真作家活動のフィールドでは、「ハガクレツリフネ」が被写体の1つなので、親近感を覚えました。
部屋紹介ページのイラストでお分かりのように,かなり贅沢な空間になっています。
部屋に入ったところが玄関(=前室)となっており,その奥に広いトイレがあります。
お茶を飲んだり、夕食や朝食の食事をする9畳の主室は掘りごたつ形式になっており,ゆっくり食事しても足が楽です。
襖を挟んで9畳の寝室があります。
「寝室と食事の部屋を分けたい」という配慮からそのように設計されたそうです。
こういうところにも“おもてなしの心”を感じます。
◎釣船草の主室。主室の奥がリビング
◎大型TVが置かれている6畳のリビング。左奥に見えているのが渡り廊下
大きな窓からは、部屋付きの露天ぶるが見えるので、目隠しのスクリーンが付いています。
◎渡り廊下と中庭
渡り廊下の向こうには、清潔感のある洗面所(パウダールーム)・洗い場(シャワーブース),そして開放感のある部屋専用の露天風呂があります。
◎パウダールーム
◎シャワーブース
◎部屋付きの露天風呂(※部屋によって形状・趣が異なります)
露天風呂とリビングの間が庭園となっていて山野草なども楽しめます。
◎四季折々の木々と山野草の庭園
◎寝室
食事の紹介
夕食は、部屋食になっていて主室でいただきます。
4月ということで“春”を感じる懐石でした。
桜の花びらに見立てた百合根があしらわれていたのが印象的でした。
夕食の一部
懐石料理になっているので,暖かい物は暖かく,冷たい物は冷たい内にいただくことができます。
味の良さももちろんですが,器も含めて目で楽しむこともできる点でも大満足の料理でした。
飲み物
お酒のメニューも充実していて地元の日本酒,ワイン,焼酎が用意されています。
地酒を楽しみたいという方には,地酒をお土産にしたい場合の味見を兼ねて,「地酒三昧」という3種類の地酒が楽しめるセットがありました。
最近は、それがなくなり、その代わりにシェフのお薦めの地酒が紹介されています。
私は赤湯の地酒は制覇している (^^;) のでよいのですが、初めての人にはお土産にする地酒の味見にもなりますので、あった方がよいのではないかと思います。
シェフのお薦めの銘柄は高級ですが間違いなく美味しいことも付け加えておきます。
私の楽しみの1つになっています。
地酒と言えば、
もし美味しい地酒をお土産にと考えられているのであれば、櫻湯山茱萸さんの斜め向かいにあるこの酒店がオススメです。
ご主人も奥さんも飲んべえさんですから、間違いなく好みの地酒を勧めてくれると思います。
私は山形の地酒を年に何回か時田さんから取り寄せています。(^^;)
◎住所:〒999-2211 山形県南陽市赤湯773
◎電話番号:0238-43-2220
◎定休日:水曜日
私の一番のお薦めはこれです。
朝食の一部
朝食は和朝食と洋朝食から選べます。
1泊目の朝は和食,2日目の朝は洋食を選びました。
洋食は,スクランブルか目玉焼きか選べて,パンかパンケーキかも選べました。
もちろん、飲み物もコーヒー、紅茶、ジュースなど選択肢があります。
夕食も朝食もデザートのフルーツが大きな器に美味しそうに盛りつけられていました。
手間を惜しまないサービスに感心しました。
大きな器に盛りつけられているのを小分けします
ついでながら,
部家には,いつでも自分たちでコーヒーがいれられるように、コーヒーメーカーが用意されていますので,好きなときに美味しいコーヒーが飲めます。
これはコーヒーが好きな私たちにはとても嬉しいサービスです。
さらには,駅まで送っていただいた際に“おにぎり”をいただきました。小腹が空いた時にお召し上がりください、という配慮のようです。
心遣いに感謝しつつ列車に乗り込んですぐにいただきました。
大浴場と部家付き露天風呂
源泉掛け流し温泉です。弱アルカリ性で「美肌の湯」と呼ばれています。
大浴場は,全室7室のために大浴場でも他の宿泊しているお客さんと会うことはあまりなく,貸しきり状態で静かに過ごせました。
入り口付近には,水分補給の設備と今まで見たこともないハイテク(?)のマッサージ器が置かれていました。
このマッサージ器には家内も私も大変お世話になりました。(^.^)
大浴場で個人的にとても感動したことがあります。
ほとんどの旅館がそうであるように,部家からはスリッパを履いて大浴場に向かいます。
他の旅館では,そのスリッパが帰る際には他のお客さんに履かれてしまっていることがよくあります。
衛生面で神経質な私たちがいつも不快な思いをする瞬間です。
ところが,山茱萸さんではなんと部家専用の蓋付きのスリッパ入れが設置されているのです!!
これには驚きました。
ここまで気配りがされている旅館を他に知りません。
次に部家専用の露天風呂ですが,各部屋によって作りが異なります。(公式ホームページでそれを見るだけでも楽しくなりますから,ぜひご覧下さい。)
私たちは,この部家専用の露天風呂にもとても感動しました。
というのも,
私たちは今までにたとえ露天風呂形式であっても部家付きの風呂は利用したことがありません。
利用する気にならなかったからです。
その程度の質だったということです。
しかし,山茱萸さんの部家付き露天風呂は,何よりも清潔感と開放感があり,庭園を見ながらゆっくり風を感じながら楽しむことができます。
洗い場も床暖房されています。
むしろ,大浴場よりも部家の露天風呂の方を好んだくらいです。
この感想は同行した家内,そして義父も同様でした。
回を重ねるうちに、ほとんどは部屋付きの露天風呂だけで済ますようになりました。
ゆるりとした楽しみ方
赤湯温泉を訪れたが観光気分がそがれるほどの生憎の雨模様だとします。
私なら,
食後の朝風呂を楽しみ,地酒を飲みながら読書でもしましょう。
眠くなれば昼寝をし,また温泉を楽しみ,マッサージ器にかかりましょう。
雨に打たれる山野草でも愛でながらワインかコーヒーでもいただきましょう。
そんな風に楽しめる隠れ家のような宿だと思います。
お薦めの蕎麦屋さん「蕎麦処 一休」
櫻湯山茱萸さんのチェックインが午後2時からなので、お昼前後に到着予定ならば、昼食は蕎麦はいかがでしょう。
絶品の蕎麦が食べられるところがあります。山茱萸さんに教えていただき、何度か行きました。
★蕎麦処 一休
◎住所:山形県上山市鶴脛町二丁目12番5号
◎営業時間:11時~19時(売り切れじまい)
◎定休日:毎週木曜日
◎電話番号:023-672-2062
◎だし巻き玉子もお薦めです。
早め(遅くとも当日の午前前半)に電話を入れて予約をしておく方がよいと思います。売り切れ御免ですから。
一度、食べられなかったことがあります。(^^)
滞在フォトメモ
第2回目:2013年6月3日 ★部屋:秋海棠 ※食事は夕食の一部
第3回目:2013年8月30日 ★部屋:大山蓮華 ※食事は夕食・朝食(和食)の一部
第4回目:2014年6月4日 ★部屋:花筏 ※食事は夕食の一部
第5回目:2014年10月18日 ★部屋:大山蓮華
2015年10月追記
2015年5月に経営陣が退陣し、新しい経営母体の元で”さんしゅゆ”さんとして運営されることになったようです。
したがって、私たちの知っている”さんしゅゆ”ではなくなりました。上記は2015年5月までの話としてご理解ください。
これからも昔のままの”さんしゅゆ”さんであることを願うばかりです。