デジタルカメラで初めて写真を撮るようになった人が多いと思います。あるいは、スマートフォンのカメラで気楽に写真を楽しんでいる方も多いかも知れません。
今回はそういう写真初心者の人たちのために、「構図をこうすれば今までとはひと味ちがう写真が撮れますよ、もしかしたら作品になるかもしれませんよ」というヒントを書いてみようと思います。
中級者、上級者にとっては当たり前のことですので、スルーしてください。
日の丸構図とは?
写真の構図の基本知識、「日の丸構図」を考えてみました。
この富士山(影富士の部分も含めて)の写真のように、被写体が中央にある構図を国旗の日の丸にたとえて、多くの場合、否定的なニュアンスで、「日の丸構図」と呼びます。
カメラは今や露出のみならずオートフォーカス(AF)が標準仕様です。
一般的なカメラでは,銀塩にしろデジタルにしろ,マニュアルフォーカス(MF)のカメラなど事実上作られてさえいません。
それどころか今や中判カメラでさえオートフォーカスになった機種も珍しくありません。
便利なオートフォーカスではありますが,その一方で大きな落し穴もあります。(と言っても,カメラ側の欠点ではなく使う側(撮影者)の問題なのですが。)
それは「日の丸構図」になりがちだということです。
原因は,ファインダーの中央にピントを合わせたい部分を持ってきて,そのままシャッターを切ることが多いからでしょうね。(コンパクトデジカメでは特にこの傾向がつよいと思います。)
もちろん,フィルム全盛時代にも初心者の一般的なミスとしてよく問題になったのですが,オートフォーカスになってこの問題はより顕著になったように思われます。
初期のAFカメラはともかくも、今のAF一眼レフカメラにはピントを測るAFポイントが複数あり,カメラによりますが,通常は中央部以外に上下左右にたくさん振り分けられています。
しかし,このことを知っているはずの人でもAFポイントを変更するのが煩わしいという理由なのか,また機敏な撮影が求められるような場合には間に合わないという理由なのか,その機能を使っていない人も珍しくはないようです。
中央のフォーカスポイント以外のピント精度の問題で、中央のポイントしか使わない人もいると聞いたことがあります。
写ればよいのだ,と思って写真を撮っている人にとっては「日の丸構図」であろうが何であろうが全く問題はありません。
しかし,写真技術が少しでも上手くなりたいと思っている人はやはり構図には神経を使わねばならないでしょう。
そして,そういう撮影者が真っ先に気をつけなければならないのが,この「日の丸構図」なのです。
まるで国旗の日の丸のように,どの写真を見ても被写体が構図のど真ん中に位置しているのは,極言すると,「何の面白みもない写真」ということになります。
もちろん、「日の丸構図」が絶対にダメだというわけではありません。(詳細は、後述の「構図に意味を持たせる」と「黄金分割」を参照してください)
例えば、
上の富士山の写真の場合、上下の位置に関しては、上・中央・下の選択肢があると思いますが、左右に関しては中央しかありません。
富士山が主題ですが、副題になるものが左右のどの位置(上部・中央部・下部)にもないからです。
私自身は、2006年からデジタル一眼レフカメラを使うようになって、それと同時にAFのお世話になるようになりましたが,デジカメということで安易にシャッターを切った最初の頃は、結構日の丸構図になっていて苦笑したものです。(最初の頃は、デジカメでの撮影は遊び感覚でしたから余計にそうなったのだと思います。)
これを防ぐには中央部以外のAFポイントを使用するか,「AFロック」を使用するのがよいでしょうね。私は後者のやり方をしています。それがMFでの撮影に一番近い感覚が得られるからです。
しかし,「日の丸構図」を防ぐもっとも効果的な方法は“構図を意識する”ことです。
自分が一番表現したいものを明確にするにはどういう構図がよいのか,それを意識することが撮影術の第1歩と言えるほど重要なことです。
言い換えれば,『構図に意味を持たせる』のです。そうしてできたのが真の意味で“作品”と呼べるものではないでしょうか。
『構図に意味を持たせる』
日の丸構図は避けるべきです。しかし,「原則として」が前提です。
6×6判の真四角画面では,上下左右の中心部に被写体を置くと,視覚効果からその被写体に自然に目が行き,その結果,被写体が目立つという効果があります。
横長画面においても日の丸構図にすることにより同様の効果が得られる場合があります。(ただし,縦長画面ではその機会は少ないかも知れません。)
どういうフォーマットであれ,日の丸画面がこの上なく功を奏すれば,実にメッセージ性が強く安定感のある威風堂々とした作品になる可能性があります。
大切なことは,理論に裏付けされた『感性』をもって堂々と日の丸構図を採用するということでしょう。
したがって,そういう理論と感性が身に付くまでは,安易に日の丸構図を用いるのは控えるのが賢明であり,「日の丸構図を避けるべきだ」の背景にはそういう意味があるのです。
何事においてもまずは基本から学ぶのと同じです。
したがって,「本当にその日の丸構図には意味はあるのか」という点において我々は独りよがりにならないように謙虚になるべきでしょう。屁理屈で自尊心を守るのは止めましょう。(自戒をこめて)
同時に,自分の勉強のためには,密かに実験的に日の丸構図で撮ってみるのはとてもよいことだと思います。
その際は,“構図に意味を持たせる”ために,あくまでも「安易にではなく,意識的に」撮ることを心掛けて欲しいと思います。
ついでながら,
ちょっと写真を撮り慣れているからといって,相手の技量も見極められないレベルの人が,「日の丸構図は…」などと助言をするのは余計なお節介というものです。
写真教室や写真グループのようなところで撮影術を習った人(特に、中高年のカメラマンに多い印象があります)の中には、日の丸構図を見たら反射的に「日の丸構図は…」と助言したくなる人がいるようです。
デジタルカメラのおかげで気楽に写真が撮れるようになったこともあり,フィルム時代よりもいっそう写真愛好家が増えたように思いますが,それと同時に中途半端な技量の「教え魔」も増えました。
撮影現場で,苦笑せざるを得ない場面に何度となく出くわしたことがあります。
私個人もフィールドで2~3度”アドバイス”を受けたことがあります。(^^)
助言は、相手とTPOを考えてほどほどにしたいものです。
『黄金分割』を知ろう
「日の丸」構図を避けるためにも構図の基本「黄金分割」を知るのが早道です。
写る範囲内の上下・左右ともに3分割して,それぞれの方向から概ねその3分の2のところにある4箇所のポイントが収まりのよい場所です。
より正確に言うと,そのポイントから中心に向かって少し内側がまさにそのポイントです。(言葉では分かりにくいと思い上のイメージ画像を用意しました。参考にして下さい。)
これをなぜ『黄金分割』と呼ぶのか、ここではその詳細には触れません。(引用だけになってしまいますので。)
興味のある人はネットで検索してみて下さい。学生時代に戻ったような気分が味わえるかも知れませんよ。(^.^)
上記4つのポイント付近の1つに被写体の一番重要な部分(例えば,朝景・夕景なら太陽,人物なら顔や目,花なら花心)を置きます。
それが一番空間バランスが美しく安定すると言われています。
しかし、「絶対にそこに置かねばならない」なんてことはありませんよ。あくまでも原則です。
要は,ど真ん中を避けて,対角線に沿って斜め左上・右上・左下・右下方向にずらしたところに置いてみましょう,その方がバランスが良くはありませんか、ということです。
どの方向にずらすかは,もちろん他の要素を考慮して決めなければなりません。
ついでながら,山岳写真界の巨匠,白旗史朗氏が言う「いの字」の構図も,その基本は黄金分割にあります。
これが構図の基本的な理論です。理論をマスターしたら,これから先は“センス”の問題になってきます。
ついでながら、構図に関するキーワードには、三角構図とかシンメトリーなどというのもあります。
日の丸構図が理解できたら、徐々にそういう他の構図のキーワードに慣れ親しむようにすると自然と構図が上手くなると思います。
参考になったでしょうか。(^.^)
追記:
上記のようなことを書くと偉そうに響くかもしれませんが、私も撮影現場では構図を試行錯誤することが多いです。それほど難しいと言うことですね。
それと、写真展で多くの作品に触れるのもよいと思います。
2015年2月19日 作例を追加