鳥の撮影を専門的にする訳ではなく、作品作りというよりはお楽しみ写真、散歩写真を撮るような軽い気持ちで出会った野鳥を撮りたいという場合に向いていると思われる超望遠レンズを紹介したいと思います。
「焦点距離500~600mm、開放値F4、価格100万円前後、重量3~4kg前後」という単焦点超望遠レンズと比べて、「軽い気持ち」で購入でき持ち出し使えるという意味で「お手軽」と表現しています。
私のウォーキングコースとなっている市内の公園で試写を行ってきましたので、その写真も作例として掲載しておきます。
どういう野鳥がどの程度の大きさで撮影できるのかの大まかな参考になればと思います。
せっかくなので、購入に至った経緯もお読み下さい。(^.^)
山岳写真家としては通常の装備に加えて重い機材を入れたザックを担いで山を歩くことが前提なので、常に山を歩く体力、特に脚力と心肺機能の維持・向上を心掛けています。
いつも山に行ける訳ではないので、この春から体力維持のためにジムのトレーニングに速歩ウォーキングを加えるようになりました。
春から初冬までの間の石鎚山系における山岳写真のハイシーズンはジムに通う余裕がなくなるので、ウォーキングがぴったりです。
ちなみに、冬場は天気の悪い日はジム、天気の良い日はウォーキングと決めています。
野鳥を撮影するきっかけの1つになったのは、”カワセミ”がウォーキングコースの出発点の池に棲み着いていると知ったことでした。
実際に何度か枝に止まっているところや飛翔の姿を見ることができました。
きっかけの2つめは、シジュウカラ・ヤマガラ・アカゲラなどが合わせて15羽ほどがほんの数メートル先の樹の周りに下りたったかと思うと忙しそうに餌をついばみ始める姿を目撃したことでした。
近づいても逃げようともしません。
そのような至近距離で野鳥を観察したのは初めての経験でした。
カワセミを撮影したいな、と思っているところにこの経験が重なり、ウォーキングに出かける際には70-300mmの望遠ズームレンズを一眼レフカメラに付けて持って出かけるようになりました。
それが9月のことです。
それから3ヶ月間、カワセミを含めて何種類かの野鳥を撮影することができました。
それらの写真は、
にまとめて記事にしてあります。
人間欲が出るもので、ウォーキングに行くたびに野鳥の撮影をしているともっと長いレンズがあればな、と思うようになります。
鳥専科ではないので、100万円前後もするような明るい超望遠レンズは買えませんし必要もありませんが、何かそれに代わるようなレンズがないかと調べてみると何本かあるようです。
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SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD
最終的に3本の候補の中から選んだのがタムロンの【SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD (Model A011) [ニコン用]】です。
ニコンデジタル一眼レフカメラ【Nikon D800E】に装着して使います。
ちなみに、候補に残った他の2種は
◎シグマ 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
◎ニコン AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
です。
焦点距離が【600mm】というのは魅力があります。
F値が少々暗いのは価格を考えれば仕方ありません。150mmでF5、600mmでF6.3になります。
「F4クラスの明るい単焦点超望遠レンズ」に比べて利点と言えるのは、その最短撮影距離ではないでしょうか。
この3ヶ月の経験では、運が良いと、2~3mほどのところに小鳥が来てくれることがあるので【2.7m】という最短距離はとても有り難いです。
さらに、長さも重量も同様に「F4クラスの明るい単焦点超望遠レンズ」よりもお手軽感があります。
カメラとレンズで約3kgの重量は、ウォーキング用のリュックの中に3kgの重りを入れていると考えれば適度の負荷です。(^.^)
水分補給のためのペットボトルなどを入れて、いつも約5kgの負荷を加えてウォーキングをしていることになります。
散歩なら重たいでしょうが、トレーニングのための速歩ウォーキングなのでむしろ好ましいでしょう。
フィルター径は【95mm】もあります。
大きなレンズフードを装着した状態で持ち歩いているのでフィルターは必要ありません。解像度が落ちるのでむしろ使いたくありません。
ついでながら、
購入に際してはラッキーなことの連続でした。
どうせ取り寄せだろうと思ってカメラ店に行ったのですが何と陳列棚に鎮座していました。
タムロンのキャンペーン中だったようです。
買えば数千円するレンズケースも貰えました。最後の1個ということでした。
不要のレンズやカメラがあれば、「何でも下取り5000円」が適用されました。
その結果、90,800円で購入できました。通販の最安値よりも安く買えました。
焦点距離600mmの世界をこの価格で経験できるならお買い得かもしれません。
2016年2月20日、レンズの不具合のために修理に出しました。最初は問題なく使えていたのですが、使い始めて1ヶ月ほどで【F0】が表示されるようになりました。
これはカメラがレンズを認識していないことを意味していると考えられます。
接点のクリーニングも行いましたが改善されるどころか日々症状は酷くなるばかりで、頻発し始めると正常なときの方が少なくなり目の前の野鳥を撮り逃すこともしばしば。
購入店で他のボディに付けても症状が発生したので、レンズの不具合と断定して良いと思います。
2016年4月3日追記
購入店からメーカーに修理に出しました。2週間ほどで戻ってきました。
しかし、訴えている症状が出ないので確認できなかったとのこと。そして、詳細を記してたレポートを添付していたので、その症状から原因と予想される部品を2点交換したとのこと。
一度出始めるとあれほど頻繁に出ていた症状が確認できなかったことに正直驚きました。何分ぐらい触ってみたのでしょう?
まあ、修理してくれたのだから由としよう。
しかし、
使い始めて2日目でまったく同じ症状が発生!!
3日目、4日目…と使うほどに発生率が高まるのも前回と同じ。
購入店に相談することにしました。
担当の店員さんが、メーカーと交渉してくれて、「新品と交換」ということになりました。
いまのところ問題は発生していません。(当然、そうでなければ困りますが。)
ようやくこれで落ち着いたようです。
野鳥の作例
撮影は全て手持ちで行っています。
被写体が木々の間を飛び交う野鳥ということを考えると、三脚使用は考えられません。
もちろん、鳥専科の写真家が鳥の生態を勉強して、例えば、カワセミを「置きピン」で撮影するような専門的な撮影方法は別ですが。
600mmの焦点距離は世界が異なって、かなり慎重に構えないとさすがにゆ~ら、ゆ~らと揺れます。(^^)
野鳥を追っているうちに腕が疲れてきます。腕の筋トレも必要かも知れません。
私の場合、現時点では、400mmまでなら「手ぶれ補正機能」のおかげで被写体がピタッと止まりますが、それ以上は難しいです。
それをカバーするためと枝などに止まった状態でも野鳥自身の動きが忙しないので動体ブレを防ぐためにも、できるだけ高速シャッターを切る必要があるだろうと思います。
そのためには、感度設定はISO800やISO1600を普通に使う必要がありそうです。
なお、使い始めなのでオートフォーカスの精度を確認する必要があるので、中央のフォーカスポイントだけを使いシングルシャッターで撮影しています。
今のところ、ピント位置の誤差は無いように思います。
対象がとにかくいつ飛び立っていなくなるか分からないので、構図に気を配っている余裕はほとんどありません。
1つの個体が何回もシャッターを切らせてくれる場合は、後半で構図に工夫をすることはありますが、まだまだほとんどは日の丸構図です。
作例(1)エナガ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/250秒
◎焦点距離600mm ISO 800 F6.3 1/320秒
モニター上で等倍にして確認すると、目に周囲の風景が映っています。
作例(2)カワラヒワ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO800 F6.3 1/3200秒
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/2000秒 +1.5EV補正
作例(3)カワセミ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
予想しないところでの突然の遭遇だったので手ブレだけは防ぎたく、このカワセミのショットだけは600mmで撮ることはあえてしませんでした。
◎焦点距離260mm ISO1600 F5.6 1/125秒
◎焦点距離380mm ISO1600 F6.0 1/100秒
作例(4)ジョウビタキ(♀)
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO800 F6.3 1/320秒
◎焦点距離600mm ISO800 F6.3 1/500秒
作例(5)メジロ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/2500秒 +1補正
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/320秒 +1/3補正
◎上の画像をトリミングしたもの
モニター上で等倍表示させると微妙にピントが甘い、あるいはわずかに手ぶれを起こしている。あるいは、これがAFの限界なのか…?
メジロの白色の縁取りがクッキリしているとよいのだけれども…。
作例(6)サンショウクイ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/100秒 +2/3補正
このシャッター速度で手ぶれが起きていません。手ぶれ補正機能は強力です。
◎上の作例を等倍に切り出した画像
モニター上で等倍表示させても、さらに2倍表示させても眼にピントがきているのが分かります。手ぶれは発生していませんし、AFのピント位置にも問題ないようです。
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/400秒 +1.5補正
作例(7)ヤマガラ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/250秒 +1.5補正
作例(8)コゲラ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO1600 F6.3 1/320秒 +2補正
作例(9)シロハラ
共通データ:★手持ち撮影 ★ノートリミング ★ノーシャープネス
◎焦点距離600mm ISO800 F6.3 1/160秒
◎上の画像ではシロハラという野鳥の全体の姿が分からないので、別のレンズで撮ったシロハラを作例として載せておきます。
★タムロン SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD ★300mm ★F5.6 ★1/125秒
たまたま近くに来てくれたのでこの大きさで撮れました。
まとめ
2日間の試写で得た収穫は、シャッター速度は「1/100」や「1/125」でも手ぶれを起こさないで撮れる場合があるということです。
追記:12月16日
今日、1/50秒や1/60秒での撮影を余儀なくされましたが、手ブレを起こしていないコマもあります。しかし、1/100秒以下になると急に確率が低くなる傾向にあることも分かりました。
しかし、手ぶれを起こしているコマもあるので、安全圏は「1/500秒」以上と考えたいと思います。
小型の野鳥はかなり動きが激しいです。
なかなかじっとしていることがありません。常に頭部を左右上下に動かす種が多いように思います。(カワセミは比較的悠然としています。)
したがって、動体ブレも考慮しなければなりませんので、なんとか「1/500秒」を確保したいものです。
感度を「ISO1600」まで上げても、「1/500秒」を確保できない場合はさらに感度を上げる選択肢もありますが、私の場合は「1/500秒」以下の低速シャッターを甘んじて受け入れて撮影しようと思います。
「ISO1600」を超えると急にノイズ感が増すようなので、現像時のノイズ処理によるデータへの負担を少なくしたいのが理由です。
また、今までは静止した被写体に対するのと同じ設定で撮影してきました。
AFのピント位置の精度や手ぶれの限界など基本的なことを確認するためです。
しかし、これからは今まで使う機会が無かったカメラの動体撮影時に有利な機能(高速連続シャッター、ダイナミックAF、コンティニュアス AFサーボ)を利用して、より野鳥撮影に適した設定で試写を行い最適の設定を見つけたいと考えています。
今後はこれらの設定を駆使してトリミングしないでも作品になるように構図を考慮して撮影しようと思います。
それにしても、普段はほほとんど静止した風景の山岳写真を撮影している身としては、この3ヶ月間の野鳥撮影の経験は新鮮なものでした。
野鳥の愛らしさも分かり、この世界にはまりそうです。(^^)