星景写真において、同じRAWファイルから現像しても星空の色表現(ホワイトバランス)の味付け次第で雰囲気が大きく変化します。
夜空のホワイトバランスのコントロールが星景写真作品のイメージを決定するとも言えるでしょう。
今回はこの星空のホワイトバランスに焦点を当てたいと思います。
ちなみに、微妙な色温度の追求やホワイトバランスを議論するには、モニターの色が正確である必要があります。
星空の色調だけでなく、作品の色調・明暗にこだわった現像を行うにはそれなりのモニターが必要になります。
参考になる過去記事を記しておきます。
これらの過去記事にあるモニターを使い、色管理(キャリブレーション)も定期的に行っています。
そしてネットにアップする写真画像は色温度【6500K】で作業を行っています。(色温度だけでなく、輝度やガンマ値も管理しています。)
このブログに載せているすべての写真画像はこういう環境の元で作成されたものであることを前提にご覧ください。
星空のホワイトバランスとは?
通常の設定のまま星のある風景を撮影すると夜空がとても不自然な色になります。
このことは、初めて星景写真に挑んだほとんどの人が経験すると思われます。

自動や昼光で撮影した場合の典型的な色
さらに、不自然なだけでなく、いろいろな条件で撮っていると星空の色は一定でないことも分かります。
仮にカメラのホワイトバランスを【WB 昼光】にして撮影したとします。
しかし、街の灯りや月の光の影響も受けますし、肉眼では分からないような夜明け前の変化もセンサーは感じ取ります。
したがって、ホワイトバランスを【WB 昼光】に固定で撮影しても、必ずしも星空の色を一定に保つことはできないということになります。
では、星空の適正な色温度はどう決めればよいのか、という疑問が生じます。
昨年春から100枚ほどの星景写真を現像した経験から得た私の答えは、
星空の色に正解はない!
ということです。
「星空と地上の風景が相まって醸し出す”作品のイメージ”に合うように決める。」
これしかないように思えます。
星空の色は個性の発揮ポイント
晴れた昼間の風景において、青空の色はある意味絶対的なものであって撮影者が自分の好みで変えてもよいというものではないでしょう。
仮にそうしたとしたら「不自然な色の青空」になってしまうでしょう。
実際、ネット上にはレタッチをやり過ぎて不自然になった青空が写っている画像が多く見られます。(モニターにも原因があるのかもしれませんが。)
もちろん、青空の色は一定であると言っているのではありません。
季節や気象条件によって、明るいブルーに見えることもありますし、深みのあるブルーの時もあります。
申し上げたいのは、グリーンに強く偏った青空は不自然なのは明白でしょうし、強くマゼンタかぶりをしても同様に不自然になるということです。
デジタル写真でついやってしまいがちな「彩度を極端に上げた青空」も然りです。
ところが、星空の色となると事情は変わってきます。
青系を中心に、青色がかったグリーンからグリーンがかった青系、あるいはマゼンタがかった青系の範囲なら、特に違和感を覚えたことはありません。
撮影者が自分の好みやインスピレーションによって、
表現しようとしている作品のイメージに合う星空の色を選択することができる
のが星景写真の特徴と言えるのではないでしょうか。
星空色のバリエーション
同じRAWファイルから現像した”バリエーション”のサンプルです。
色温度の単位には「K(ケルビン)」を用います。
◎撮影時の設定:2750K
現像前の状態。月の光の影響を受けるとブルーになります。
◎タングステン-白:2850K
ブルー系はやはり基本でしょうね。
◎蛍光灯:3800K
ブルー系以外でよく用いるのがこの「蛍光灯」です。さらに「色かぶり補正」で好みになるように微調整が基本です。
◎タングステン-白:2850K
「色かぶり補正」でグリーンを強調したバリエーション。グリーンの強調が驚くほど功を奏する場合があります。ぜひお試しを!
◎タングステン-白:2850K
「色かぶり補正」でマゼンタを強調したバリエーション。普通はこのバリエーションは使いません。同じ色温度でも「色かぶり補正」でここまで変えられるというサンプルとして紹介しています。
いかがですか?どれも夜空の色としてはそれほど違和感はないのではないでしょうか。
作品のイメージに合う色温度を追求するのも星景写真ならではでしょう。
ならば、この”特権”の恩恵にあずからない手はありませんね。