山岳写真を撮影するには、ゴースト&フレアに対して逆光耐性が特に強いカメラとレンズが必要です。
なぜなら、山岳において”ドラマ”は、朝夕特に日の出前後や日没前後の完全逆光や半逆光の時に起こることが多いからです。
ゴーストやフレアを心配するあまり、太陽をフレームの中に入れるのを躊躇し安全を優先して太陽をフレームアウトした構図を”セカンドベスト”として選ぶなどというのは馬鹿げています。
むしろ、積極的に”太陽に向かってシャッターを切る”べきです。
少なくとも、それが私が長年実践してきた”山岳写真の流儀”です。
★参照記事⇒「太陽に向かってシャッターを切る|山岳写真の流儀」
その一方で、
デジタル機材では逆光に特別強いレンズ(正確には、レンズ&カメラ)の選択肢はあまり多くないのが現実であり、大いなるジレンマとなっています。
しかし、デジタル機材を使い始めて10年経過してようやく、フィルム時代よりもゴーストに強いカメラとレンズに出会えました。
逆光写真を極めるためのカメラとレンズ
デジタル一眼レフカメラを使い始めたのは2005年です。
最初は、「試しに使ってみる」という感覚で、フィルムカメラが「主」、デジタルカメラが「サブ」という位置づけでした。
しかし、デジタルカメラでは山岳写真に限らず本格的な逆光&半逆光写真が思うように撮れなくなり困りました。
原因は「ゴースト」です。
”作品”を損ねるようなゴーストが派手に出ることが珍しくありませんでした。
フィルム時代でも「ゴースト」を避ける最善の処置として、35mmも中判カメラも逆光耐性に優れていた【Carl Zeiss】の単焦点レンズを主に使っていました。
それでも完全には防ぐことなどできませんでしたが、ツァイスのレンズのおかげで逆光写真を積極的に撮影できていたと思っています。
それがデジタルの時代になり、最初はペンタックスの一眼レフカメラをセットで貰い受けたこともあり、「ペンタックス」ユーザーとして”試用期間”を開始しました。
その後、「Nikon D300」で「ニコンユーザー」になり、本格的に使うからにはフルサイズで勝負をしようと、2010年に「D700」を購入し、現在は「D800E」を使っています。
2007年に購入した【PENTAX K10D】と純正レンズ【SMC PENTAX DA ZOOM16-45 F4 ED AL】の組み合わせは後から考えると、『逆光耐性』がかなり優れたセットでした。
時には,簡単にゴースト・フレアが発生することもあるにはあったのですが,中判カメラの単焦点レンズでもゴーストが出るような条件であっても,このズームレンズでは出ない、あるいはほとんど出ないことが何度もありました。
下の作品がその一例です。
◎2005年撮影:【PENTAX *istD】+【SMC PENTAX DA ZOOM16-45 F4 ED AL】
このような完全逆光の条件で撮っても、ゴーストは小さい点状のものが2つあるだけです。
”作品”を損ねるようなゴーストは発生していません。
上の写真を撮影したのと同じ時に中判カメラ【Pentax 645】に45mmの単焦点レンズを付けて撮影しましたが、もっとハッキリと目立つゴーストが発生していました。
結果的には、そこで早合点をしてしまいました。
「デジタルカメラおよびレンズも逆光耐性が飛躍的に延びたのだ」と。
そこで、これからはデジタルカメラを主機材にしようと決め、諸々の条件を考慮して、ニコン機材に移行することにしました。
ところが、ペンタックス機材を処分してニコンユーザーになると、逆光耐性という点では、逆光写真を撮る度にペンタックス機材を処分した「後悔」の連続でした。
正直なところ、ニコンの誇る「ナノクリスタルコートというのはいったい何なのだ!」と思いました。
ニコンのレンズで一度でも使用経験が有り、山岳写真に使えそうなレンズは、
◎AS-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
◎AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
◎AF-S NIKKOR 16-35 G ED VR
◎AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR
です。
※これ以前に、DXフォーマットのカメラ【D300】用のレンズも何本か使用経験があります。
上から3本は、ニコン自身が『ゴースト、フレアを激減させるレンズ設計の革命技術』と自画自賛している「ナノクリスタルコート」が使われています。
ネット上でも、コーティングに関しては、多くの人が「さすが!ナノクリ」と賞賛しているようです。
しかし、ゴースト問題に関しては、私には不満しかありません。
太陽をフレームの中に入れた場合、木の幹や枝などでできるだけ直射を防がなければ派手にゴーストが出るのが普通です。
月を撮影しても出ます。照明でも同様です。
◎朝日の撮影でのゴースト発生例
※分かりやすくするために右下隅付近だけを極端に明るくしています
◎夜間撮影でのゴースト発生例(月齢不明)
◎半月に近い月齢でのゴースト発生例
ゴーストが100パーセント発生しそうな場面でも、ダメ元でとりあえず撮影はします。ですから、ゴースト発生サンプルはいくらでもあるはずなのですが、いざ探そうとするとなかなか見つかりません。無用なRAWファイルを削除するからです。(^.^)
上の写真は全て、「AF-S NIKKOR 16-35 G ED VR」で撮影したものです。
「ナノクリスタルコート」が施されているのに、私の中では逆光では安心して使えないレンズです。
付け加えておきますと、星景写真では月の光があまり強くなくて「月」を画面の中央部におけばゴーストが発生しにくいことも同時に確認しています。
こんな風に、ゴーストには苦労させられてきました。
デジタル機材では、思うような”逆光作品”はほとんど撮れない状況が続いてきました。
ですから常に、「逆光に強いレンズ」を渇望し情報を求めていました。
2014年の10月頃だったでしょうか、「価格コム」で「逆光耐性に優れている」「逆光に強い」という情報に接したのは。
ここから本当の意味で、私にとってデジタル機材が主製品となり、撮影の方向性が大きく変わりました。
銀塩時代に撮っていたのと同じような写真を撮れるというだけでなく、デジタルカメラでしか撮れない山岳写真が撮れるようになった、と感じました。
ゴーストという点では、銀塩時代の機材よりも信頼できるカメラとレンズが見つかったのですから。
そして、このところどこか消極的になっていた「逆光の山岳写真”魂”」に再び火がつきました。
SONY α7R+Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS
私の「逆光の山岳写真”魂”」に火を付けたのは、【ソニーのミラーレス一眼】との出会い、つまり、【SONY α7R】と【Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS】を入手したことでした。
ゴーストがほぼ常に出る、と、たまにはゴーストが出ることもある、は私にとっては大違いで、まったく次元の異なる世界です。
この【Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS】というレンズは、とても逆光耐性に優れたズームレンズです。
「ズームレンズなのになぜ!」と思うほどです。
ゴーストという点では、並の単焦点レンズをはるかに凌駕しています。
ですが、「ゴーストが発生しない」とまでは言えません。
どのように優れたものでも光学製品である以上は「ゴースト」は避けられないものなのかも知れません。
しかし、「とても発生しにくい」あるいは「極めて発生しにくい」とは言えます。
今までの経験では、昼間よりも夜の強い光を浴びる方が発生しやすいように感じます。
また、焦点距離は【24mm】付近の方が他の焦点距離よりも発生しやすいように思います。
一眼レフからミラーレス一眼へ
私は他社のミラーレス一眼カメラに関する知識はまったくありません。
これから書くことは【SONY α】シリーズの一眼カメラに関してです。
一般に、電子ビューファインダー(EVF)は、逆光写真を撮るのにとても適したファインダーです。
光学式ファインダーのように、ファインダーの中で太陽を見ることで目を傷める可能性を心配する必要がありません。
私が使っている【SONY α7R】のファインダーでは、しっかりとゴーストの有無を確認し、発生が見られるようであればファインダーから目を外さずに、少しアングルを変えるとかズームレンズの場合は焦点距離をわずかに変えて調整するというような微調整が可能です。
もちろん、露出補正や色温度の調整などもファインダーの中で可能です。
光学式フィンダーのように、テスト撮影して液晶で確認する、という手間がほとんど省けるでしょう。
これらは光学式ファインダーではできない芸当です。
このようなことから、私は今すぐにでもニコンのカメラとレンズを処分して、ソニーに移りたいと思っています。
ところが、【SONY α】シリーズの欠点は、レンズの選択肢が少ないという点にあります。
したがって、一度にソニーに乗り換えるという訳にはいきません。
当分の間は、αシリーズのカメラと【FEマウントレンズ】を増やしながら、ニコンのカメラとソニーのカメラを使い分けて撮影を続けなければなりません。
それにしても、1年前までの私は、レンズはともかくも「家電メーカーのカメラなんか使う気にならない!」と思っていました。
先入観でした。不明を恥じています。