「星を目立たせる」工夫には、撮影時にできることと、撮影後の現像の際にできることがあります。
この記事では、現像時に行う工夫を扱います。
ということは、そもそも撮影時に【RAW】で撮影していることが前提です。
撮影時に行う工夫については、『星を目立たせる-撮影編|星景写真の知識』を参照してください。
現像ソフトは【Adobe Lightroom 5】を使っています。(この記事を書いている時点では、まだ「6」にバージョンアップしていません。)
数日前に、「SILKYPIX Developer Studio Pro7」のベータ版が公開されたばかりですが、『円形補正フィルタ』と『段階補正フィルタ』が新しく採用されたので、これから紹介する「星を目立たせる」方法を「SILKYPIX Developer Studio Pro7」でも同じようにできるのではないかと推測します。
これから行う現像プロセスはすべて【Adobe Lightroom 5】上での作業であることを前提にお読みください。
露光量と明瞭度とコントラストで調整
過去記事『星を目立たせる-撮影編|星景写真の知識』で使ったのと同じ写真を用いて作業を進めます。
いたずらに情報量が多くなり過ぎるのを防ぐために、「星を目立たせる」ための作業だけを紹介します。
1.露光量を調整
この作例は適切な濃度なので、露光量による明るさの調整は省力します。
一般に、露出量のスライダーを「+」側に動かすと、その分星の数が増える(あるいは、星が目立つ)のが分かると思います。
しかし、完全な露出不足でもない限り大きな効果は望めないと思います。
適正露出で撮影した写真の場合は、「微調整」程度と考えましょう。
2.明瞭度とコントラスト
まずは、基本に立ち返って両者の違いをおさえておきましょう。
●コントラスト…全体の明暗をハッキリさせる
写真の階調全体の明暗を強調します。
「基本補正」パネルの上にある「ヒストグラム」パネルを見ながら左右に極端に動かしてみると意味がよく分かると思います。
強め過ぎるとノイズや彩度が強調され全体的な雰囲気が不自然になります。
●明瞭度…細部のコントラストを高める
階調全体にではなく、「シャドウ~中間調」および「ハイライト~中間調」においてコントラストを増やして明暗を強調します。
つまり、白トビ・黒ツブレを抑えながら自然な雰囲気を維持しつつ「クッキリ感」を演出してくれます。
その結果、特に中間調の色や明るさが強調され、同時に輪郭がハッキリ見えるような印象に仕上がります。
☆注意点
何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、強調しすぎるとハロが生じて不自然になることがあります。「ハロ」とは、被写体のエッジに発生する明るい(or 暗い)縁取り線のことです。
この設定を使用するときは、「ハロ」の状態の確認のために、100% 以上の倍率までズームインして作業をするのがよいです。
自然な範囲内で最大の効果を出すには、いったん「+100」まで適用し、被写体の縁に発生しているハロが消えるまで数値を下げるようにします。
このような両者の違いを考慮して、私は「明瞭度」を優先的に調整した後で、必要があれば「コントラスト」を追加調整するようにしています。
★テスト(1):ソフトフィルターを使っていない画像:撮って出しの状態
明瞭度⇒「0」 コントラスト⇒「0」
明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「25」
明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「50」
星は徐々に目立つようになっていますが、コントラストを上げるにしたがい周辺光量不足が強調され、空の色も彩度が高くなっています。
好みによっては、「色温度」や「色かぶり補正」の調整が必要になるでしょう。
★テスト(2):ソフトフィルターを使った画像:撮って出しの状態
明瞭度⇒「0」 コントラスト⇒「0」
明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「25」
明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「50」
明るい星の目立ち方の違いがよく分かると思います。
一方で、空の色の変化に加えて、周辺光量不足も強調されてしまいます。
完成作品にさせるためには、色温度など全体的な調整が必要なのは言うまでもありません。
段階フィルターと円形フィルターで調整
今年の春までは私自身も使っていた国産の現像ソフト【SILKYPIX 】シリーズの最上級版として「SILKYPIX Developer Studio Pro7」のベータ版が11月26日に公開されました。
このバージョンから、【Lightroom】にはあって【SILKYPIX 】には欠けていた『円形/段階フィルター』が搭載されることになりました。
【SILKYPIX 】ユーザは期待大だと思います。
おそらく、これから紹介する「星を目立たせる」工夫の発展編も可能になるでしょう。
それでは、作業を開始しましょう。
効果の程度が比較できるように、上で使ったのと同じ写真を使います。
★テスト(1):ソフトフィルターを使っていない画像:撮って出しの状態
これに最上部から下に向かって3分の2くらいまでドラッグして「段階フィルター」の領域を指定します。
つまり、星があまりない明るい部分は除外する訳です。
段階フィルターは、ドラッグした開始位置が効果が最も高く、徐々に終点位置に向かって効果が弱くなっていくという性質があります。
したがって、効果が『強』から『弱』へとグラデーション状態になる訳です。
次に、段階フィルター用の補正パネルで「明瞭度」と「コントラスト」を設定します。
段階フィルター:明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「50」
さらに円形フィルターで、夜空の不動のスター(シリウス・オリオン座・アルデバラン・スバル)を強調します。
これは星単位で円形フィルターの領域を指定するので細かい作業になります。
しかも、星単位の領域ということは、他に影響を及ぼすことなく「明瞭度」を思い切ってかけられることを意味しています。
ここがポイントです。
円形フィルター:明瞭度⇒「100」 コントラスト⇒「50」
その結果、仕上がったのがこの作例です。
「テスト(1)」で作成した、「明瞭度」と「コントラスト」だけで仕上げた画像を下に再掲載します。比較してみましょう。
明瞭度⇒「50」 コントラスト⇒「50」
「段階フィルター」+「円形フィルター」で仕上げた上の画像の方が星が目立っていますね。
ソフトフィルターを使った写真の場合も同様の結果になりますので、ここでは省略します。
まとめ
夜空の星を目立たせるためには
1.「露光量と明瞭度とコントラスト」で適正化する。
2.「段階フィルター」あるは「円形フィルター」を、あるいはその両方を同時にあてる。
ということが効果的だとお分かりになるでしょう。
しかし、個人的には、そもそも最初からある程度目立つ星を写し込んでおくことが大切だと経験から実感しています。
「目立つ星」とは、『夜空の不動のスター』と個人的に呼んでいる「シリウス・オリオン座・アルデバラン・スバル」のカルテットです。
これに、ソフトフィルターをかけておけば申し分なしということになるでしょう。