先日の夜間撮影の際に、メーカーの異なる2種類のレンズでほぼ同条件で撮影したにも関わらず光芒の出方に大きな違いがありました。
以前からおぼろげながら感じていたことですが、レンズによって光芒が発生しやすいものとそうでないものがあることが図らずも実証されました。
本題に入る前に、「光芒」の定義をしておきます。
「光芒」は、一般的には、細長く伸びる一筋の光の帯を意味します。
写真の分野では、太陽などの強い点光源を撮影した際にできる放射状に広がった光の筋を『光芒(こうぼう)』と呼んでいます。(正確には分かりませんが、「光条」と表現することもあるようです。)
光芒の数に関しては下記の記事を参照してください。
★ブログ内記事 ⇒ 絞り羽根と光芒の数の相関関係
光芒は光の回折現象によって生じるのですが、物理的に詳細に説明できるほどの知識を持ち合わせていませんので、興味のある方はグーグル先生にお尋ねください。
「円形絞り羽根+開放値」の条件でも光芒は発生する
まずは論より証拠、下の写真を見比べてみてください。(拡大表示すると違いがよく分かると思います。)
(クリックで拡大表示可能)
ほぼ同時刻(20秒くらいの違い)に、どちらも同焦点距離(16mm)+同シャッター速度+開放絞り値(F4)で撮影しています。
★左の写真 ⇒ 【AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR】で撮影
他の作例をこちらの「デジカメ Watch」の記事で見られます。
【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】ニコン「AF-S NIKKOR 16-35mm F4 G ED VR」
★右の写真 ⇒ 【Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS】で撮影
一目瞭然ですが、これくらいの大きさ(拡大前のサイズ)でも、左の方には光芒らしさが無く、一方右の写真ではクッキリとした光芒が認められます。
左のニコンのレンズでもよく見ると光芒は発生していますが、美しい光芒と表現できるレベルではありません。
右のソニーのレンズでは、絞り開放でも既に美しい光芒を形成しています。
円形絞りで、しかも絞り開放でもこれだけ明瞭な光芒が発生することにただただ驚きました。
太陽を画面内に入れた逆光撮影において、少なくとも山岳写真の分野では、絞り開放で撮ることはほとんどあり得ないので、今回認識を新たにした次第です。
誤解して欲しくないのですが、光芒が出るレンズが良いレンズだと申し上げている訳ではありません。
しかし、中途半端に出るくらいならクリアに出て欲しいと思いますし、紺碧の空を背景に太陽を映し込むような条件では、当然のごとく美しい光芒を望みます。
そういう意味では、広角から標準系の(ズーム)レンズで美しい光芒を提供してくれるレンズを1本持っておくのは良いことだと思います。
いや、むしろ風景写真では必須と言って良いかもしれません。
光芒の出やすい(出にくい)条件
同一レンズで撮影した場合に、光芒の発生しやすい(あるいは、発生しにくい)条件を確認しておきましょう。
光芒が発生する機会としては画面内に太陽を入れた場合が多いと思いますので、太陽の光芒を例にとります。
一般に、太陽の光芒は、空気が澄んでいる方が発生しやすいものです。
言い換えると、太陽の周囲に薄い雲がかかっていると見た目に分かるほどには発生しないことが多いです。
さらには、見た目にガスや霞が認められないような場合でも、空気中の水分が多いときがあり、そのような場合にも発生しにくくなります。
したがって、山が普段よりも近くに見えるほど空気が澄んでカラッとしている時が一番美しい光芒が得られると考えられます。
というわけで、梅雨のこの季節は美しい光芒を期待できる機会は少なく、秋から冬の間はその機会が多くなると言えます。
上記は気象条件ですが、レンズそのものにも触れておきます。
絞りを、【F1.4 → F2 → F2.8 → F4 → F5.6 → F8 → F11 → F16 → F22 】のように絞れば絞るほど、出やすいと同時に光芒が長くなります。(ただし、絞り過ぎると回折現象の影響で「小絞りボケ」が発生し解像度が落ちますので注意が必要です。)
また、「円形絞り」の方が出にくいのですが、最近のレンズは円形絞りがもはや標準仕様となっていますので、この点では選択肢はあまりないでしょうね。
背景の点光源がボケたときには美しいので「円形絞り」は大歓迎なのですが、「太陽に向かってシャッターを切る」撮影スタイルの私としては、ある程度絞った時には光芒が出やすいような形状にして欲しいと思います。
ところで、
好みの光芒の数は「6本/8本/10本」なのですが、ニコンのレンズでもソニーのレンズでも、その数は得られません。
この点では、8枚絞り羽根(←8本の光芒を生成してくれる)を選択できるキヤノンユーザーが少し羨ましくなります。
撮影時の注意点
太陽を入れた場合は露出が難しいです。
全体の露出バランスを現像時に調整できるように、【RAW】での撮影をお薦めします。
具体的には、光芒を生かすなら、太陽の光芒がクッキリと見える程度に空の部分をアンダー気味に撮影します。
他の部分は、後から適正露出になるように補正します。【±1EV】までならダメージを与えないで補正できるはずです。
★実例を参照 ⇒ 初心者のための「Lightroom」RAW現像例-補正ブラシの効果的な使い方
この実例の場合、全体の露出量は変えずに、アンダー部分を現像ソフトで「覆い焼き」に相当する処理をしました。