アドビのRAW現像ソフト「Adobe Photoshop Lightroom 5」を使った現像例の第6弾です。
今回は、今までで一番「補正ブラシ」の恩恵に浴する作例があったので、「補正ブラシの効果的な使い方を」をご紹介したいと思います。
【Lightroom 5】の正式ユーザーになって約10日後に【Lightroom 6】が正式リリースされ、へそを曲げております (^^;) ので、バージョンは「5」のままですが「6」でもこの機能に変化はないと思います。
今回の現像作品例は、このようになります。
作例の紹介|逆光のミツバツツジ
作例は先日撮影した逆光のミツバツツジの写真です。
この写真に関しては、本ブログの別記事「ミツバツツジを前景に雲海の石鎚山を望む|山岳写真」にも取り上げています。
今回この作品をプロラボにプリント(全紙)依頼する際に「試しプリント」をして、もう少し編集したい部分が出てきました。
それがたまたま「補正ブラシ」の活躍する場面だった訳です。
では早速、元画像から見てみましょう。
暗いという印象を持たれると思います。
詳細は、上記のリンク先にある過去記事をご覧いただくとして、撮影の重要ポイントを再確認しておきます。
私の山岳写真では、「太陽に向かってシャッターを切る」を旨としています。
上例のような条件の際には、必ず太陽を構図の中に入れて撮影します。(もちろん、そうでない構図のものも念のために撮影はしますが。)
しかも、光芒をできるだけクッキリと表現したいので、白トビをさせることはできませんから、このような露出になります。
つまり、アンダーになった訳ではなく、あえてアンダーに写したのです。
もし花を適正露出にさせていたら、下例のような露出になるでしょうね。
これでは、光芒は白トビ状態になり現像段階で再現不可能です。(行楽写真ならこれでも上等でしょう。)
肝心な部分を白トビさせないで、なおかつアンダーになる部分の現像時におけるダメージを少なくするようなギリギリの露出を設定しています。
上例の場合は、極端に言えば、アンダー部にあるミツバツツジの赤い花の部分だけが再現できればよいので、ここまで切り詰めた露出設定ができます。
ついでながら、
画面左端中央に枝が映り込んでいますが、太陽の位置と山の頂上部分の位置そしてミツバツツジの位置を考慮してこの構図しかなく、編集段階で除去することを前提に撮影しています。
また、花の部分に見られるゴースト(2カ所)は、主役のミツバツツジの鑑賞の妨げになりますので、これも除去します。
ゴーストを除去するかどうかはの判断は、多くの場合、PCのモニター上で表示させて決めています。
編集作業の流れ-最後の仕上げは「補正ブラシ」!
「補正ブラシ」を使うまでの作業の流れを簡潔に記しておきます。
1.「カメラキャリブレーション」で「Camera Neutral」を選択 ←過去記事参照
2.「レンズ補正」で「プロファイル補正を使用」と「色収差を除去」にチェック
3.「自動補正」を適用して明るさのバランスを確認し、この後の作業の流れを決める
「自動補正」はよくできているので、一度適用させてみる価値はあります。
少なくとも、下のパラメーターを見ることで、補正の参考になりますので、適用させてみることをお勧めします。
「自動補正」のパラメーターを基にして補正をすることも多いのですが、今回は参考だけに止めておきます。
青空の部分の露出を維持したまま、焼き込みや覆い焼きの機能を使って再現したいと思います。
4.「基本補正」パネルの項目を調整
「色温度」から概ね下に向かって各項目を調整していきますが、今回は特に「ハイライト」「シャドー」と「白レベル」「黒レベル」を駆使します。
※過去記事の「RAW現像ソフト「Lightroom 5」で表現するHDR・覆い焼き・焼き込み効果」を参照
コントラス・彩度などは最後の仕上げで、「明瞭度」と「自然な彩度」で調整するので控え目にしておくのがコツです。
5.「スポット修正」ツールで枝の映り込みとゴーストを除去後、微調整
ゴースト除去後、「明瞭度」と「自然な彩度」で最後の調整をします。
その結果、上のような状態にまでなりました。
概ねこれで良いのですが、
左上の雲の暗い部分が陰鬱な感じがして気になりますので、そこを「補正ブラシ」で調整したいと思います。
同時に、花の部分ももう少し明るく表現したいと思います。
6.補正ブラシを活用
「補正ブラシ」というのは、部分的に明るさや色などを調整したい場合に、ブラシで描くようにその部分を指定できるツールです。
その際に、下記を確認しておきましょう。
1.ツールバー(フィルムストリップの上にあるスペース)で「選択したマスクオーバーレイを表示」にチェックを入れます。
こうしておくと、ブラシで描いた部分が赤い半透明の色で表示されますので、指定した部分を視認できます。
塗りの作業が終われば、適用する明るさや色調の結果を見るために、チェックを外しましょう。
再度確認したい場合は、適用ポイントを示すピン「●」の上にマウスポインターを置くと少しの間があって、赤い半透明が一時的に表示されます。
2.補正ブラシを選択すると表示されるパネルで「自動マスク」にチェックを入れておきます。
これによって、自動的に対象部分の輪郭を検出しながらマスクの範囲を指定できるので、ブラシによる塗りの部分がはみ出るのを防ぐことができます。
ブラシで塗った部分が下のように表示されます。(実際に雲に赤く色が付いた訳ではありません。)
塗りがはみ出しても心配ありません。「補正ブラシ」のパネルの中に「消去」ツールがありますので、はみ出した部分を消しゴムで消す感覚で消去できます。
また、補正の適用前と比較したい場合は、パネルの左下に「ブラシ補正をオフにする」というボタンがあるので、それで「ビフォー/アフター」を切り替えて比較することができます。
全体を表示させると、下のようになりました。これで完成とします。
雲の印象が変わり、ずいぶんと印象が明るくなりました。
ミツバツツジの部分も少し明るくなりました。
もっと明るい方がよいと感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、写真をどれくらいのサイズで鑑賞するかによってその判断は異なります。
今回は全紙にプリントするために外注したのですが、それくらいの大伸ばしにする際は、こういう調整は控え目にしても効果は大きいものです。
逆に言うと、小さなプリントなら、もう少し大胆な調整でもよいかもしれません。
このことは、コントラスト・彩度・全体の露出にも当てはまります。
つまり、
最終的な調整は、最終的な鑑賞サイズによって決まる、という側面があるということです。