「仮想コピー」を活用すると、元の写真には何の影響も与えず、カタログ内に異なる現像結果を複数格納することができます。
あるいは、複数のアスペクト比に対応したトリミング画像をそれぞれ後のためにそのまま残しておけます。
仮想コピーは元写真そのものの複製ではなくカタログ内にある写真のデータを複製したものですから、作成も削除も自由自在ですし、データ量も軽いのが特徴です。
前提として、
これから後の説明は次の定義に基づいていますので注意してください。
ここで言う「元写真」とは、(撮影メディアからフォルダに取り込み、さらには)カタログに読み込む対象となった元の写真のことです。
カタログに取り込んだ後、フィルムストリップに表示される個々の写真を、「仮想コピー」に対して「マスター写真」と呼ぶことにします。
「仮想コピー」の作り方と特徴
「仮想コピー」はどのモジュールでも作成できますが、通常は「ライブラリーモジュール」か「現像モジュール」を開いているときだろうと思います。
現像対象のマスター写真を選択して、右クリックし(Windowsの場合)、「仮想コピーを作成」を選択するだけです。(メニューからも作成できますが、右クリックから入る方が効率がよいと思います。)
実際に作ってみます。
2枚作りました。この画像で説明を続けます。
「仮想コピー」には、次のような見かけ上の特徴が表れます。
特徴(1)
仮想コピーには、それぞれのサムネールの左側にページめくりアイコン(写真の左下のめくり上がり)が表示されます。(上の画像の赤い丸の中)
特徴(2)
仮想コピーは、作成されると自動的にマスター写真とともにスタックされます。したがって、「スタック」を理解しておく必要があります。
※スタックとは? ⇒ 【Lightroom】の「カタログ」作成前にやっておくこと、作成後にやるべきこと
上記の記事中の、【5.「スタック」を利用して、フィルムストリップを整理】を参考にしてください。
特徴(3)
フィルムストリップでは、マスター写真のサムネールの左上隅に画像の枚数が表示されます。(これは「スタック」と大いに関係があります。)
上の画像では、マスター写真に「3」という数字が表示されていますが、マスター写真と2枚の「仮想コピー」の計3枚がスタック状態にあるということを示しています。
ついでながら、マウスポインターをマスター写真の上に置くと、「1/3」と表示され、すぐ右の「仮想コピー」の上に置くと、「2/3」と表示され、同様に、2枚目の「仮想コピー」の上に置くと、「3/3」と表示され、それぞれスタックされた写真の1枚目、2枚目、3枚目という意味を表しています。
上記の3つの特徴は、グリッド表示させても同じです。
注意点
マスター写真を削除すると「仮想コピー」も削除されます。
上の画像のように【Lightroom】が確認してきますから大丈夫だとは思いますが、「マスター写真は削除しない」を原則としておく方がよいでしょう。
写真の管理(整理整頓)が適正に行われていれば、マスター写真を「削除」する必要は生じないはずですね。
★参照記事 ⇒ 【Lightroom】の「カタログ」作成前にやっておくこと、作成後にやるべきこと
「仮想コピー」の便利な使い方
本当に大切なのはここからです。
この「仮想コピー」はどういう風に役立つのでしょうか?
例えば、マスター写真の現像結果には何の変更を加えずに、マスター写真の現像調整とは異なる設定を仮想コピーに適用することで、現像結果のバリエーションをいくらでも作成することができます。
上の画像の例では、現像調整を行ったマスター写真の「仮想コピー」を2枚作って、それぞれに異なるホワイトバランスを設定してみました。
こういうことが、「現像結果のバリエーション」という意味です。
一版に考えられる応用例ですが、
写真の利用目的応じて現像の調整設定を変える必要が生じる場合があります。
例えば、
「仮想コピー(1)」はウェブ用の写真として現像し、「仮想コピー(2)」は自家プリント用に「Adobe RGB」の色域で現像し、「仮想コピー(3)」は外注プリント用に「sRGB」の色域で現像するために、別々の現像調整データを作成する訳です。
特に、モニターのキャリブレーションを行ってカラーマネージメントを行っているプロアマを問わず写真家は、こういう使い方が利用価値が高いはずです。
別の例ですが、
【Lightroom】が2015年4月にバージョンアップしました。
旧バージョンの【Lightroom】で行った現像調整を新しいバージョンの【Lightroom】の新機能「フィルターブラシ」を使って現像調整をやり直したい写真があれば、旧データはそのままにしておいて、「仮想コピー」を作成して、新しく現像調整を行うことも考えられるでしょう。
あるいは、
私は最近「現像の代行」を依頼されて行うことがあるのですが、場合によってはクライアントに複数の現像結果を提示して、好みのものを選んでもらい、そこからさらに細かい調整を行うことがあります。
時には最初から、比較のために2種類の現像結果を見せて欲しいという要望もあります。
このような場合は、それぞれの現像調整を保存しておく必要がありますから、「仮想コピー」は必須のツールとも言え、いったん使い始めるとこの上なく便利なものになります。
「仮想コピー」は必要がある間は保存しておき、必要がなくなった時点で削除すればよいだけですので管理が簡単です。
また、
何らかの理由で、マスター写真は常に素の状態にしておきたいという場合もあるでしょうね。
実は私自身、「仮想コピー」の使い勝手の良さが分かってからは、現像調整する場合はまず対象写真の「仮想コピー」を作成してから作業を始めるようになりました。
つまり、マスター写真は常に素のまま(撮影時の状態)にしてあります。
こうすることで、例えば、現像調整の結果として生じた(あるいは減少した)ノイズの状況などをマスター写真と簡単に比較検証できるので、作業がとても捗り助かっています。
さて、「仮想コピー」の有益性がお分かりいただけたでしょうか?
上手に使って作業効率を高めましょう。(^^)