「林床の妖精」シリーズです。今回は、早春の森にひっそりと咲く可憐で美しい妖精のような四国梅花黄蓮の紹介です。
『林床の妖精たち』とは?
「スプリング・エフェメラル(=春植物/早春植物/春の妖精)」の正確な定義からは外れはするけれども,同時期に咲く可憐で美しい妖精のような花たちもスプリング・エフェメラルと同じように扱ってやりたい,という想いが山野草愛好家としてはあります。
そこで、スプリング・エフェメラルを意味する「春の妖精」と区別するために『林床の妖精たち』と名付けました。
シコクバイカオウレンの図鑑情報
キンポウゲ科の多年草で、日陰の林内に生え、高さは5〜15㎝の多年草です。
花名に「シコク」がつくことから推察できるように、四国の固有種です。
葉は地下茎から束になって出て、長い柄をもち、5枚の小葉からなっています。
小葉は3浅裂した長さ約1.5㎝の倒卵状くさび形で縁には鋸歯があります。
人里近いところでは早春に、花茎を伸ばし径約1.5㎝の白い花を1個頂に咲かせます。
花弁に見えるのは実は萼片で、実際の花弁は中心部を王冠のように取り巻く黄色い直径約3㎜のコップ状の形をしたものです。
雄しべは多数あり、花柱は強く反り返ります。
本種は、本州産株と同様にバイカオウレンまたはゴカヨウオウレン(五加葉黄蓮)とされていました。
ところが、花弁や花柱など形状の違い(花弁はコップ状、花柱の先の強い反曲)から、2004年に四国産のものは本州産の変種として区別されるようになりました。(コップ状というのは少々誇張的な表現ですが、専門家がそのように解説されています。私のイメージでは、“片手で水をすくうときの手のひらの形”に近いでしょうか。)
県内では海抜1000m以上の高地(赤石山系、石鎚山系)の限られた所に生えているようですが個体数は極めて少ないと聞いています。(私自身は両地域ではお目にかかったことはありません。)
県外では高知県、徳島県に見られます。剣山系の標高の高いところでは晩春あるいは初夏に咲くところもあるようです。(本州産は、初夏に咲くのが一般的と聞いています。)
人里近くから標高1800m付近までその生育分布域を広げている山野草も珍しいのではないでしょうか。
ちなみに、私が撮影したのは、高知県のある里山に隣接する林内でした。