アドビの現像ソフト「Adobe Photoshop Lightroom 5」を使った現像例の第2弾です。
前回と同様に今回も逆光の雲海風景ですが、青空と雲海のさわやかなコントラストが最大のポイントです。
★前回の現像例-「初心者のための「Lightroom 5」現像例-逆光の山岳風景写真(光芒と雲海)」
共通項は「光芒と逆光の雲海」でも、前回の現像対象とした山岳風景とは異なり、空気が澄んだ早朝の強烈な逆光状態です。
ゴーストも少しですが多目に出ています。
こういう条件では、後の現像を考えると、光芒と雲海をできるだけ白トビさせないことが必須です。
そのことに注意さえすれば、現像そのものは比較的易しいかもしれません。
【Lightroom 5】によるRAW現像のプロセス
1.作品の完成イメージを構築する
現像作業に取りかかる前に、「現像の方針(=作品の完成イメージ)」ができている必要があります。
理想は、撮影時に完成イメージを思い描いてシャッターを切ることです。
私の場合、気合いを入れて撮る、つまり、”作品”としてものにする意気込みでシャッターを切る場合は、完成形を無意識のうちにイメージしているように思います。
ですが、まだまだポジフィルムでの完成イメージなのです。
長年の経験で身についたものですから、すぐには”デジタル仕上げ”には切り替えられません。
作品作りのための追い込んだ現像を繰り返すうちに細かいところまでイメージできるようになるでしょう。
今回の完成イメージは、「光芒を活かした蒼空の大雲海」です。
爽やかな青空と白い雲海のコントラストをとことん追い込みたいと思います。
2.現像対象をよく観察する
作品の完成イメージを具現化するために、大まかな作業手順や問題点を意識しながら、元データをよく観察します。
まずは、右の赤丸の中に黒いものがありますが、これはセンサーのゴミではなく、周辺を飛んでいた虫(ブヨ)です。
虫が映りこんでいないコマもありますが、こういう処理はよくあることなので敢えて修正作業を紹介するために、このコマを選びました。
左の赤丸の中には、ゴーストがあります。編集によってこれ以上目立つなら消すことにします。
ちなみに、作業に取りかかる際には、「クリッピング表示」をオンにしておきましょう。
白トビ、黒ツブレの状態を確認できます。ショートカットキーは「半角英数字の J 」です。
白トビしているところは、赤く表示され、黒ツブレしている箇所は青色で表示されます。
3.左カラムにある「プリセット」の『ポジプリント調』を充ててみる
色調が不自然ですね。こういう風に緑に偏った青空の色はありません。
イメージが異なりますので、不採用です。
「プリセット」の中で唯一使えそうな『ポジプリント調』すが、なかなか使える機会がありません。
地味目の写真に充てるとよいかもしれませんね。
ちなみに、「カメラキャリブレーション」を充てた後で「プリセット」を用いると、「カメラキャリブレーション」のプロファイルはデフォルトの「Adobe Standard」に戻ります。
「プリセット」を試すなら、「カメラキャリブレーション」を選択する前にしましょう。
4.カメラキャリブレーションを確認
カメラキャリブレーションについては
★過去記事「現像ソフト「Lightroom 5」のカメラキャリブレーションとは?」
を参考にしてください。
ペンタックスのプロファイルは用意されていないと思っていたのですが、「Pentax 1.00」というのと「Camera Standard」があります。
【Lightroom】のお約束では、カメラ機種由来のプロファイルは「Camera ~」となるはずなのですが、「Pentax 1.00」の正体がよく分かりません。
両方を充ててみると、「Pentax 1.00」の方が青空の色がイメージに近いので、今回はこの設定から編集を始めることにします。
「プリセット」や「カメラキャリブレーション」はスルーして、いきなり次の「基本補正」から始めても何の問題もありません。
ですが、初心者は「プリセット」や「カメラキャリブレーション」にある『カメラプロファイル』にイメージに合うものがあれば、作業効率がアップするので確かめるクセは付けた方がよいように思います。
また、追い込み型の現像ではなく簡易的な現像で十分な場合のためにも、普段からプリセットやカメラプロファイルを充ててみて、発色傾向や描写の特徴などに慣れておくと、どれを適応させればよいか早く判断できると思います。
5.「基本補正」パネルの『自動補正』を適用させて結果を見る
方向性としては、これで良さそうです。
全体の露出はここから追い込みますが、光芒の露出は概ねこれが基準になるでしょう。
作業効率化のためには、「自動補正」も一度は試してみることをお薦めします。
ここから本格的な追い込みが始まります。
6.ホワイトバランスと全体の明るさを調整
「基本補正」パネルでは、『WB(ホワイトバランス)』→『階調』→『外観』の順番にやっていくのが、何度か現像をやってみると理にかなっているのが分かります。
★まずは『ホワイトバランス』を調整します。
今回は、数値を直接変化させるのではなく、スポイトツールを使って雲海の明るいところを基準にしました。
こういう条件では、空はあくまでも青く、雲海はどこまでも白く、にこだわりたいからです。
★次は「階調」で露出の調整です。
「ハイライト」と「シャドー」で「覆い焼き&焼き込み」に匹敵する調整を行います。
◎参考記事 ⇒ RAW現像ソフト「Lightroom 5」で表現するHDR・覆い焼き・焼き込み効果
円形フィルターで、光芒を力強く表現するためにコントラストを少し高めます。
★「外観」で『明瞭度』と『自然な彩度』を調整します。
『明瞭度」を調整する際は、
明瞭度 部分的なコントラストを増やして画像の奥行きを強調します。この設定を使用するときは、100% 以上の倍率までズームインすることをお勧めします。効果を最大限にするには、画像のエッジ付近にハロが現れるまで設定を上げてから、設定を少し下げます。
を実践しましょう。
ずいぶんイメージに近くなってきました。
7.『スポット修正』を使って虫とゴーストは消去
ツールの中から『スポット修正』を選択します。「コピースタンプ」と「修復」がありますが、デフォルトでは「修復」が選択されていると思います。
その状態で、ブラシのサイズを対象の大きさに応じて決めます。
サイズのところにカーソルを当てると、左に2重の円が現れます。それを見ながらサイズを決定します。
対象がこのような単純な形状だと簡単に消すことができます。
8.「HSL/カラー/グレースケール」パネルで青空の色を微調整
特定の色を調整する時はこの機能が役に立ちます。
これを使いこなすと部分的に異なるホワイトバランスを充てることができます。
このように調整した結果が下の状態です。
9.「ディテール」パネルで『ノイズ軽減』を調整
「ルーペ表示」で等倍以上(個人的には、2~3倍くらいが分かりやすい)で確認しながら調整を行います。
10.全体的なチェック
一番苦労したのは雲海の質感です。
輝き感を出すために、もっと明るくしたいのですが、そうなると微妙なグラデーションが失われます。
雲海の左上部がほんの少し明るくなるように露出を調整し、コントラストも少しだけ強めました。
11.完成作品
「蒼空の大雲海」というイメージになりました。
実際の完成イメージは、この写真よりも明るく見えます。
微妙な濃度やグラデーションを含む写真の場合は、小さな画像にするほど濃度が濃く見えるからです。
現像を終えて
【Lightroom】を使い始めてまだ3週間足らずでは、これが限界のようです。
逆光に輝いて躍動するような雲海よりも、こういうおとなしい雲海の方が現像が難しいと感じました。
雲海の部分の描写にはまだ完全には満足は出来ていませんが、今後【Lightroom】を使い続けることになれば解決がつくような予感がします。
それまでの宿題です。