梅雨の晴れ間の雲上のお花畑|石鎚山

梅雨の晴れ間に石鎚山に登ると、待っているのは青空の下の雲海風景と高山植物…。雲海は運まかせですが、花は確実に見られます。

雲海 (5)

石鎚山弥山頂上直下にも小規模ながらお花畑はありますが、頂上に行く迂回路を途中から右に進みます。

さらにすぐの分岐を右に入り、後は左後ろに石鎚の山頂を見ながらしばらく歩くと『雲上のお花畑』があらわれます。

梅雨の晴れ間の大雲海を狙う

雲海というのは、山間部や盆地で発生しやすい自然現象で、文字通り辺り一面を覆い尽くした雲が海のように見える状態です。

近くの山々の頂上部が、雲の中に浮かぶ島のように見えるところから”雲海”と呼ばれるようです。

梅雨の時季だと、前日あるいはその日の未明から早朝まで雨が降って、その後は快晴が期待できると同時にできる限り「無風」状態に近い予報が出ると狙い目です。

そんな日に出かけると、待っているのは雲海を見たり雲海の中に入ったりしながらのドライブと雲上の山野草・高山植物です。

雲海は発生する保証はありませんが、花は待ってくれています。


瓶ヶ森林道沿いの雲海風景

雲海の中を走ったり雲海の上に出たり変化があって面白いが運転には気をつけましょう。特に、早朝と言えども忘れた頃に対向車があったりするのでなおさらです。

雲海 (2)

雲海 (3)

雲海 (4)

雲海 (5)

登山道沿いの新緑風景

5月だと萌黄や若葉など、瑞々しい新緑風景を味わえますが、6月になるとこの程度まで新緑が揃ってきます。

しかし、まだまだ深緑まではいっていないので若々しい印象があります。

新緑 (1)

新緑 (2)

新緑 (4)

弥山頂上からの新緑風景と天狗岳

新緑 (3)

雲上のお花畑散策

それではお花畑に向かいましょう。

弥山頂上へ上る前に直接行くのもよいと思いますが、余計な荷物を頂上に置いて、身軽な格好で行くのがよいと思います。

一部足下が悪いところがあったり、笹に覆われて道の状況が確認できないようなところもあるので捻挫防止という意味でも、荷物が重たい場合は先に頂上に行って、小屋の人に一声かけて荷物を預かってもらうことを勧めます。

★頂上下の迂回路から花畑に行く分岐を過ぎたところ

雲海

★左後ろに石鎚山頂上部を見ながら進む

雲海 (1)

しばらく進むとお花畑が見えてきます。

途中にはマイヅルソウが足下に咲いていることでしょう。

それでも、お花畑の主役たち、途中の花たち、頂上部の花も含めて紹介しましょう。

イワカガミ|岩鏡

石鎚山頂上部にも咲いていますが、“お花畑”の3主役の1種です。

自然の厳しいところに咲いているので、アップで撮影するには、花弁の先が傷んでないのを見つけるのは結構大変です。

イワカガミ (3)

イワカガミ (1)

イワカガミ (2)

イワウメ科 イワカガミ属

★名前の由来

葉に光沢があることから鏡に見立て,生育環境を表す「岩」を冠したもの。

★生育環境・特徴

日本各地の山地や高山の主に岩場に生える常緑の多年草。石鎚山系では笹原の中にも自生しているところがあるかと思えば,天狗岳北壁のような厳しい環境にも適応して咲いている。まさに高山植物というイメージがある。

葉の間から10~15cmの花茎を伸ばしその先に5月末頃より2~数輪の花を咲かせる。花色は淡紅色だが咲いた直後は紅色に近いこともある。径1cmほどの花冠基部は筒状だが先は細かく裂ける。その姿が気品とともに華やかさを醸し出している。

白花もあり,シロバナイワカガミというが,ヤマイワカガミとは異なる。

類種に,中部地方以北に自生するオオイワカガミや主にアルプス山域で見かけるコイワカガミなどがある。

この約20年間の間に,石鎚山山頂付近では手の届く所に咲く個体数は激減した。盗掘が主な原因だろうと推察する。実際,園芸用スコップを使った盗掘現場を目撃したこともある。

★花期:4月中旬~7月上旬 ※同じ山域でも分布域の標高差が大きい

★分布:北海道 本 四国 九州

キバナノコマノツメ|黄花の駒の爪

これも石鎚山頂上部にも咲いています。運が良いと、雨が流れ落ちてきたのか、北壁直下の登山道沿いに咲いていることもあります。

キバナノコマノツメ (1)

キバナノコマノツメ

キバナノコマノツメ (2)

スミレ科 スミレ属

★名前の由来

駒之爪(こまのつめ)は葉の形を馬のひづめにたとえ,これに花色を表す「キバナノ」を冠したもの。

★レッドデータ

愛媛県は「絶滅危惧2類(VU)」に指定している。

★生育環境・特徴

亜高山~帯高山の日当たりのよい少し湿った草地・林の縁・ササ原と接する場所などに生える草丈5~20cmの多年草。

葉はハート形で鮮やかな緑色をしており,薄くて柔らかい。葉先は丸く鋸歯があり,葉縁や葉の表面には微毛が生える。このためか光沢はない。根生葉は長い柄があり大きいが,3~4枚つく茎葉は小さい。

初夏から夏にかけて上部の葉腋から花茎を伸ばし,その先に径1cm内外の黄色の花を横向きに咲かせる。距は短い。各花弁に褐色の筋があり,上4枚の花弁は反り返る。

まことに愛らしい花で,高山で見るスミレは里山のスミレとはまた違った趣がある。また,めったに出会えないだけに会えたときの喜びはひとしおだ。

昔,ある山の水場近くに一株あったがいつの間にか無くなってしまった。

■撮影のポイント

この花を写すには露出に気をつかう。露出オーバーになると花弁の質感がなくなり,露出アンダーになると黄色が濁る。RAW撮影をするにしても段階露光をしておく方が安全かもしれない。

この花が咲いているようなところはいつも風があるので,アップを撮影するには根気がいる。

★花期:6~7月

識別のポイント

タカネスミレと似るが,四国はその分布域には入っていない。タカネスミレの葉には光沢がありツヤツヤしており,厚くかなりしっかりした葉らしい。

四国には黄色いスミレとして「キスミレ」があるが,花冠と葉の形状で容易に識別できよう。

分布:北海道 本州(中部地方以北) 四国 九州(屋久島)

ユキワリソウ|雪割草

ユキワリソウも石鎚山頂上部にも咲いていますが、この“お花畑”の3主役の1種です。

個人的には、この花が一番の目当てでこのお花畑まで足を伸ばします。

ユキワリソウ (1)

ユキワリソウ (2)

ユキワリソウ (3)

ユキワリソウ (4)

ユキワリソウ (6)

ユキワリソウ (9)

ユキワリソウ (10)

ユキワリソウ (11)

ユキワリソウ (8)

ユキワリソウ (12)

ユキワリソウ (5)

ユキワリソウ (7)

サクラソウ科 サクラソウ属

★名前の由来

雪を割って出てくることはなく,雪解け直後に花を咲かせるところから。声に出してみると美しい響きがある。

★レッドデータ

愛媛県は「絶滅危惧1B類(EN)」に指定している。

★生育環境・特徴

山岳地の湿った岩場に生える小形の多年草。長さ10前後の花茎を出し,先に3~10個の花をつける。花は淡紅色で径は1cmほど。

私はある時期、この花に会いに“雲上の花畑”まで毎年のように出かけて行た。そこではキバナノコマノツメ・イワカガミと伴に咲く。そして,スジグロシロチョウやモンキチョウが遊びに来ている。

高山に風に揺られて愛らしく咲くこの小さな花には健気さを感じるのでお気に入りだ。しかし,上昇気流が発生するような時間帯になると撮影にはことのほか根気が要るのも事実で,時間にゆとりを持って出かけるようにしている。

★花期:6~7月

★分布:北海道 本州(中部地方以北) 四国 九州

マイヅルソウ|舞鶴草

石鎚山系の至るところで見られます。登山道沿いに咲いているのに気が付くと一服の清涼剤となります。

土小屋コース上、お花畑への道中および頂上部で撮影したコレクションです。

マイヅルソウ

マイヅルソウ (3)

マイヅルソウ (5)

マイヅルソウ (4)

マイヅルソウ (7)

マイヅルソウ (2)

マイヅルソウ (1)

ユリ科 マイヅルソウ属

★花名の由来

葉全体の形と葉脈の丸みを帯びた線が,鶴が羽を上に広げ舞う姿に似ているところから。

★生育環境・特徴

比較的標高の高い亜高山帯の針葉樹林帯の木かげに多く生育する多年草。この花はその丸まったハート形の葉のために花が咲く前から識別が比較的簡単。アルプスなどでも夏山を代表する可憐な花。石鎚山では頂上の厳しい環境の岩場に咲いていることがあり,さらにいとおしく見える。

花が終わったあとの果実も一見に値する。緑色と赤褐色のまだら模様から,次第に初秋には真っ赤に熟し,逆光で見ると宝石のように美しくさえある。

★花 期: 5~7月

★分 布 情 報: 北海道 本州 四国 九州

ミヤマダイコンソウ|深山大根草

頂上直下の迂回路の”ミニ”お花畑で簡単に見られます。

ユキワリソウと一緒に咲いています。どちらを主役にするかは貴方次第です。

ミヤマダイコンソウ (1)

ミヤマダイコンソウ (2)

ミヤマダイコンソウ (3)

バラ科 ダイコンソウ属

★名前の由来

葉の出方が野菜の大根に似ているところから。深山に生育するためにミヤマを冠する。

★レッドデータ

愛媛県は「絶滅危惧1A類(CR)」に指定している。

★生育環境・特徴

高山帯の岩場や岩の割れ目に生える多年草。石鎚山が四国では唯一の自生地で分布域の南限。西日本では他に奈良県の大峰山に咲くらしい。

草丈10cm~30cmほどになる。全体に毛がある。花茎がまばらに分岐し,先に径2cmほどの鮮黄色の5弁花を数個つける。花の後,基部に細かな毛を伴って花柱が約1cmも伸長する。

大きくて丸い根生葉が特徴。光沢があって革質だ。不揃いの切れ込みと鋸歯が縁にある。茎から出る葉はとても小さく目立たない。茎を抱くようについている。

花期がユキワリソウと重なる時期があるので一緒に咲いていると、黄色と淡紅色のコントラストがきれいだ。また,葉は秋になると紅葉する。生育場所を知っている人は秋にぜひ紅葉しているところを見てほしい。

★花期:6~8月

★識別のポイント

アルプスなどでは花だけ見るとミヤマキンバイと紛らわしいが,葉の違いで容易に識別できるだろう。

★分布:北海道 本州(近畿以北) 四国(石鎚山)

シコクイチゲ|四国一華

これはオマケです。

雲上のお花畑の花たちがピークを過ぎると”山の夏”の花が主役になります。

7月の主役はこの気品溢れるシコクイチゲです。

IMGP0745

キンポウゲ科 イチリンソウ属

★名前の由来

「イチゲ」は,ハクサンイチゲの特徴である1つの花柄に1個の花をつけることによるらしい。これにシコクを冠したもの。

★レッドデータ

愛媛県も環境省も「絶滅危惧1A類(CR)」に指定している。

★生育環境・特徴

赤石山系と石鎚山系の高所の岩場にのみ生育する多年草で,愛媛県の固有種。アルプスではいたるところで普通に観察できるハクサンイチゲの近縁種だ。

夏に登山者を迎えてくれる純白の花は常に風に揺れ,あくまでもひたむきで清楚だ。しかし,残念ながら個体数は極めて少ない。

シコクイチゲと石鎚山の関係は,キタダケソウと北岳の関係と同じだろう。その花だけを見たいがためだけに石鎚あるいは北岳に登るのだ。その山を代表する憧れの花であり,その山にしか咲かないからだ。固有種とはそういう存在だ。

個体数が極めて少なくなった大きな原因はササの侵入であると言われているが,盗掘による減少も見過ごすことができない事実だ。実際,私の知る限り手の届くところで観賞できる株が2箇所あったが,2004年に両方とも盗掘にあってしまった。人が近づけないような岩場にはそれなりに残っているが,近くまで行けたとしても双眼鏡や望遠レンズが必要かもしれない。

★花期:主に7月

★分布:四国(石鎚山系,赤石山系)

まとめ

梅雨の晴れ間に見られる山野草・高山植物を雲海風景と伴にご紹介しました。

いかがでしたでしょうか。

雲上のお花畑は崩れやすいところなので中に入り込まず、登山道から撮影しましょう。

登山道からでも、どの花もじゅうぶんに撮影できます。

マナーとして、それだけはお守りください。


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